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2019年5月18日 (土)

LFJ2019 その8 歌曲伴奏のマスタークラス

 日付が変わってから帰宅して、布団に入ったのが午前2時過ぎ。8時過ぎには起き出して、あれこれやる事やって家を出て、東京国際フォーラムに到着したのは、11時少し前でした。そのまま、真っ直ぐにガラス棟の会議室に行って、マスタークラスの整理券を入手してから、お昼ご飯を食べました。メニューは昨日と同じ、吉野家さんの牛丼です。昨日は大盛り牛丼だったけれど、今日は超特盛牛丼(笑)です。なんかすごそうだけれど、超特盛と言っても、ごはんの量は大盛りと実は同じなんです。ただ、上に乗っている牛肉が大盛りよりも倍増しているってだけの話です。肉はいっぱい食べたいじゃない? なので、これに生卵をかけて、タンパク質を増やしてからいただきました。で、食べ終わると、時間的にちょうど良い感じになったので、会場に向かいました。

マスタークラス
 東京国際フォーラムガラス棟 G402
 ヨアン・エロー(伴奏ピアノ)

 1)リスト「ローレライ」

 なんと珍しい、歌曲の伴奏ピアノのマスタークラスです。なので、生徒さんは、当然ですが、伴奏ピアノの人です。もちろん伴奏だけじゃ演奏は成り立ちませんので、歌手さんも同伴です。よく、歌手のレッスンにピアニストを同伴するってのは聞きますが、ピアニストのレッスンに歌手を同伴するってのは、なかなか珍しいなあと思いました。

 例によって、先生がおっしゃったあれこれの指示の中から、私の心に響いた事柄を書き残しておきます。

 リートは歌詞が大切。この詩はハイネが作詞したもので、ローレライとは、ライン川に棲んでいるセイレーン(人魚、川の神)の事です。彼女がよくいる岩山のすぐそばは、川下りの難所で、昔は多くの船が難破したそうです。ちなみに、この岩山のすぐそばに、ニーベルングの指輪のお話の原因となったラインの黄金があったという設定になっています。まあ、そういう有名な伝説系のお話です。なので、マスタークラスの一番始めに、歌手さんが歌詞の日本語訳を読んでくれました。

 で、ピアノの演奏になりますが、先生曰く「歌詞に即して、ピアノはもっと演劇的に弾いてください」との事です。具体的に言えば、もっと神秘的に…って事らしいです。

 この曲の伴奏部分は、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」に通じる部分があるので、それを意識して弾くのもアリという話です。もちろん、リストはワーグナーの義父(リストの娘のコジマがワーグナーの妻)なので、この曲の方が古い(約20年前)のだけれど、ワーグナーが「トリスタンとイゾルデ」を作曲する際に、この曲が念頭にあったのかもしれない…と思われるそうです。実際、リストとワーグナーは、お互いに影響を与え合う間柄でした。

 イントロ部分は欲望のフレーズです。セイレーンの魔的な雰囲気の中に、欲望を持った人間が飛び込んでくるのです。

 この曲にはオーケストラ版があるけれど、それは聞いたことがあるのか? と先生が生徒さんに質問をしました。音色に関しては、オーケストラ版を大いに参考にするべきとの話です。いや、参考にするどころか、自分のピアノがオーケストラになったかのように、豊かな音色で演奏するべきだとも言ってました。ピアノの音は、常にオーケストラの音色や発音の仕方を参考にするべきなんだそうです。例えば、クラリネットのフレーズなら、いきなり強い音で吹けるはずはないのだから、やさしく吹き始めて、徐々に音が強くなっていくのを、ピアノでも表現しないといけないとの話ですが…それって難しくない?。

 この曲にはピアノソロのバージョンもあるけれど、それは聞いたことがあるか?とも尋ねていました。ピアノソロ版は、歌曲のピアノよりもさらに細かな指示が書かれているのだそうです。それらの指示も頭に入れた上で演奏するべきだそうです。

 ピアノを弾いているとは言え、五線譜ばかり見ないで、歌詞もきちんと見ましょう。伴奏ピアノは、常に歌詞の世界に寄り添って弾かないといけないのです。

 一つのフレーズは、しっかりと一つのフレーズとして聞こえるように弾かなければいけません。もちろん、歌手のブレスの問題もあるけれど、音楽を延々と演奏してはいけないのだそうです。これは音楽に対する意識の問題でもあるのです。

 この曲は、基本的に霧の中が舞台なので、具体的なピアノの音が聞こえてはいけません。あくまでもピアノで霧のモヤモヤを表現しないといけないのです。歌がピアノと同じ音域で入ってきたら、ピアノはよく深くぼんやりとした霧の中に埋没していかないといけません。

 楽譜には、八分音符と三連符が混在しているけれど、その違いが聞いて分かるように弾いてはいけないそうです。その理由として、ソルフェージュの試験をしているわけではなく、ピアノで霧の演技をしているのだから、表現を優先するべきであるというのです。

 この曲は、実は舟歌なのです。

 楽譜に忠実で正しい演奏するのは、当たり前の話であり、その上で、より演劇的に、より感情を込めて演奏しないといけません。だからと言って、ピアニストが感情のおもむくままに、無闇に音楽のテンポを落としてはいけません。歌手がテンポを落としてきたら、それにつきあうのは大切だけれど、ピアニストの方からテンポを落とすのは厳禁です。なぜなら、テンポを落として苦しいのは歌手だから。ピアニストは歌手を助ける立場であって、苦しめてはいけないのです。

 同伴してきた歌手さんも、ピアニストさんと同世代という事もあり、先生は歌手さんにもいくつかのアドヴァイスをしていました…と言っても、そのほとんどは、ドイツ語の発音関係でした。歌手さんのドイツ語は、我々日本人の耳で聞くと、立派にドイツ語なのですが、ヨーロッパ人(先生はフランス人)の耳で聞くと、あっちこっち引っかかるようで、子音を中心に直していました。その違いは、カナでは書き表せないような微妙な違いなのですが、先生的にはすごく気になるようなのです。

 とにかく、歌曲伴奏のマスタークラスなんて、なかなか見れないモノですからね。とても楽しく勉強させていただきました。

 続きはまた明日。

 

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