ひとこと

  •  最近、読みたいなあと思ったビジネス書とか実用書は、たいてい紙だけでしか出版されていない(涙)。なので、買えないし、読めない。それにあれだけ読んでみたいと切望していたのに、一週間もすれば、私の興味が次に移っているので、その本の事など、どーでもいい気分になっていたりします。以前は、週末ごとに書店に行って、ごっそり本を買っていたのに、昨今はそんな感じで読みたい本が電子書籍化されていないので、読めず、買えずで、読書量が落ちている私です。紙の本を買えばいいじゃんと思われるかもしれないけれど、一度電子書籍に親しんでしまうと、もう紙の本には戻れないんだよ。紙の本を販売しちゃいけないとは言わない。ただ、電子書籍版も同時に発売してくれよ~と声を大にして言いたいだけなのです。
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2018年8月29日 (水)

メトのライブビューイングで「ロメオとジュリエット」を見てきた

 えっと、アンコール上映で、2007年上演の「ロメオとジュリエット」を見てきました。もう、10年以上も前の上演です。

指揮:プラシド・ドミンゴ
演出:ギイ・ヨーステン

ジュリエット:アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)
ロメオ:ロベルト・アラーニャ(テノール)
マキューシオ:ネイサン・ガン(バリトン)
ステファーノ:イザベル・レナード(メゾソプラノ)

 グノー作曲のフランスオペラなので“ロミオ”ではなく“ロメオ”ね。ジュリエットは英語でもフランス語でも“ジュリエット”なので変化しません…ってのは、どうでもいい話か(笑)。

 この演出での上演は、すでにメトでは行われていません。2016年にバートレット・シャーの演出に変更されてしまったからです。

 で、この上演なのですが、あれこれいわく付きの上演のようですが、私は気に入りました…が、そこは賛否両論かもしれませんね。

 まず、そもそも、ロメオはアラーニャではなく、本来はローランド・ヴィラゾンだったそうです。それが、ヴィラゾンのキャンセルで、アラーニャに代わったのだそうです。当時、ネトレプコもヴィラゾンも30代半ばですから、ロメオとジュリエットは…多少トウが立っているとは言え、まあ、やれない年齢ではありません(ロメオもジュリエットも十代半ばという設定)が、アラーニャはすでに40代半ば。ちょっと年齢的に厳しいかもしれません。なにしろもう十分、親の年齢だしね。

 第二に、この演出は、そもそもがナタリー・デセイのために考えられた演出で、デセイが演じるという前提があっての演出であって、デセイほど演技ができるわけでもないネトレプコには、そもそも厳しい演出を無理に無理を重ねてなんとかしている(ようで、結構物足りない)わけです。

 第三に、指揮者が、当時はまだテノール歌手だったプラシド・ドミンゴが担当している事。つまり、素人…と言うと言いすぎかもしれませんが、テノール歌手としてはリビング・レジェンドであったとしても、まだ指揮者修行中のペーペーがメトの大舞台で指揮台に上がっちゃったって事です。

 というわけで、あれこれあったわけですね。

 まずテノールがアラーニャに変更した点ですが、私は賛成です。別にヴィラゾンよりもアラーニャが素晴らしいというつもりはありません。ヴィラゾンにはヴィラゾンの、アラーニャにはアラーニャの素晴らしさがあるって話です。

 確かにアラーニャは、すでにロメオを歌うには、当時、年を取りすぎていたのかもしれませんが、ロメオは彼にとっては十八番の役であって、若い時に散々歌ってきた役の一つであって、歌に関して言えば、悪いはずはありません。実際、すごく良かったし…。そういうベテランのワザを見るのも、素敵な経験です。

 まあ、残念と言えば、これはアラーニャのせいではなく、メトの技術スタッフの失敗なんだけれど、今回のライブビューイングでは、アラーニャの高音がすべて割れて収録されてしまっていた事です。いわゆる“過入力”ってやつで、声にディストーションがかかっちゃっているんですよ。これ、ロックならいいんだけれど、オペラではダメだよね。声がジャリジャリしちゃうんだよね。この過入力は、別にアラーニャの歌だけでなく、オーケストラのトゥッティにも、ソプラノのffでも聞こるんだけれど、一番目立ったのがアラーニャの歌声の過入力でした。まあ、テノールの歌声ってオーディオ機器には負担で、テノールばっかり再生していると、スピーカーが早くヘタるとも言うしね。それだけ力強くアラーニャは歌っていたって話です。

 メトのライブビューイングって2006年スタートだから、このロミジュリの段階では、まだ2年目で、今と比べると、あれこれノウハウ不足だったわけで、それでこんな音声収録になっちゃったんだと思います。ちなみに、カメラワークの方も結構ガタガタしていたし、インタビューのやり方とか幕間の見せ方とかも今とは全然違います。黎明期のライブビューイングは色々まだまだだったわけですね。

 ネトレプコの演技は…とても頑張っていたと思います。でも、この演出はやっぱりデセイで見たかったな。ネトレプコが演じるなら、もっと棒立ち演技でもよかったと思います。ネトレプコもプロのオペラ歌手だから、全然演技ができないわけじゃないけれど、そこは最初っから歌手であるネトレプコと、舞台女優あがりのデセイでは比較にならないわけで、それなのに同じ演出でやっちゃダメでしょって話です。当時のネトレプコはまだ若くて美しかったわけだから、そんなに難しい事させなくても、十分、ジュリエットを演じられたと思うんだよね。なんか、中途半端な感じがしました。

 ドミンゴの指揮は…オケが素晴らしかったと思います。メトほどのオーケストラになったら、指揮者は誰であれ水準以上の演奏はしちゃうでしょ? だからドミンゴの指揮でも問題はなかった…と私は思うし、あくまでも指揮やオーケストラは歌手たちを支える側なんだから、まああんなもんでいいんじゃないの? ただ、テノールのキャリアの終わりに、あれだけ頑張って指揮活動をしていたドミンゴが、今では指揮はやらずにバリトンに転向したという事実を見ても、指揮者ドミンゴは…あまり需要がなかったんだろうね。そんな気がします。

 で、今では上演されなくなったヨーステンの演出だけれど、これ、ロミジュリでなかったら通用しないかもしれませんね。なにしろ、舞台装置が象徴的で、舞台だけを見ていると、時間と場所の特定が全然できません。舞台中央に回り舞台があるんだけれど、なんかこれが意味不明なんです。でも、ロミジュリだからね。ストーリーは世界中の誰もが知っているわけだから、こういう象徴的な演出でもいいのかもしれません。

 それに衣装は、現代風ではなく、なんちゃって中世風だったのは、私的には良かったかなって思います。なんちゃって中世風というのは、男女の衣装とも、一見、中世っぽいんだけれど、現代人の目から見て「これ、どーなの?」的な部分は、一部現代的にしている衣装デザインが“なんちゃって”だなあって思いました。

 簡単に一例を上げて言うと、当時の男性貴族の衣装って、特に下半身は“タイツ+ちょうちんブルマ”でしょ? でも、そんな格好をしているヤツはほとんどいなくて、大半は、ジャージ地のジーンズっぽい作業ズボンでした。そんな生地、中世にねーよ。でも、カッコいいかな? すべてがこんな感じでした。

 それにしても、ロミジュリって、良いオペラだな。美しいメロディにあふれるオペラです。これで歌詞がフランス語でなければ、ぜひ私も歌ってみたいオペラです。いやあ、眼福ならぬ、耳福でしたよ。

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