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2018年4月16日 (月)

メトのライブビューイングで「セミラーミデ」を見てきた

 標題通り、ロッシーニ作曲の「セミラーミデ」を見てきました。「“セミラーミデ”? なにそれ、美味しいの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。まあ、それほどに上演機会の少ない、マイナーオペラなわけです。

 なぜ、このオペラの上演機会が少ないのか? それには色々な理由があります。

 1)歌唱が難しいから。
 2)ストーリーの進行が遅く、上演時間が長く、今の時代に合わないから。
 3)母殺しで解決されるストーリーって、どうなの?
 4)主役がカストラートだから。

 まず1)の歌唱が難しいから…について。このオペラの歌唱部分の楽譜って、どのパートもおそらく“真っ黒”なんだと思います。つまり、装飾音符やらメリスマやらがやたらと多くて、すべてのパートにコロラトゥーラ歌手が必要とされるからです。つまり、細かい音符を正確に転がしていくのが得意な歌手が必要なのです。

 コロラトゥーラという歌唱技法って、実はかなり難しい技法なのです。だから、コロラトゥーラが得意な歌手を、わざわざ“コロラトゥーラ歌手”と呼んでしまうくらいに、コロラトゥーラが得意な歌手って、珍しいし、それだけ希少価値な歌手なのです。

 で、コロラトゥーラという技法は、コロラトゥーラ歌手の大半が、声の軽いソプラノ歌手である事から分かるように、声が高くて軽い事が必要条件となってきます。つまり、声が低い歌手であったり、重い声の持ち主では、声が転がりにくく、なかなかコロラトゥーラが出来ない…という事情があったりします。

 で「セミラーミデ」ですが、オロエ役のバス歌手以外のソリストさんたちには、これでもかってくらいに、やたらとたくさんの…と言うよりも、ほぼすべてのフレーズにコロラトゥーラが付いているのです。コロラトゥーラ標準仕様…ってわけです。はい、ソプラノだけでなく、メゾにもテノールにもバリトンにもコロラトゥーラが得意な歌手が揃わないと成り立たないのが、このオペラなんです。

 そりゃあ、上演されないわな。まあ、今回みたいに無理やり(?)敢行しても、揃える歌手は技量第一優先となるから、スター歌手を揃えることは難しいだろうし、スター歌手が揃わないと、オペラの興行的には厳しかったりするので、そうなると、ますます上演機会が減るだろうね。

 あ、ちなみに今回はこんな感じのキャスティングでした。

指揮 マウリツィオ・ベニーニ
演出 ジョン・コプリー

セミラーミデ(ソプラノ) アンジェラ・ミード
アルサーチェ(メゾソプラノ) エリザベス・ドゥショング
アッスール(バリトン) イルダール・アブドラザコフ
イドレーノ(テノール) ハヴィエル・カマレナ
オロエ(バス)ライアン・スピード・グリーン

 ほら、スター歌手はいないでしょ?

 2)について書くと、まず上演時間は、2幕ものにも関わらず、休憩入れて約4時間かかります。つまり、普通の映画を2本連続して見ているような感じです。で、ストーリーの描写がかなり丁寧で、オペラを見ていて、お話はとても分かりやすいのですが、いかんせん、ストーリー進行が本当にゆっくりで、見ていてキツイものがあります。オペラなのに、丁寧にストーリーを描写しちゃっているんです。いやあ、見ていて疲れますよ。

 さらに3)について書くと、このオペラのストーリーって、結局“母殺し”なんです。父の仇として母を殺すという「え? なに、それ??」って話なんです。国民総マザコンなイタリア人ならともかく、日本人だと…いや日本人に限らず、他の国々の人たちに共感してもらうのって、キツイんじゃないかな?

 で、トドメが4)になります。このオペラの実質的な主役であるアルサーチェという役は、若い軍人なんです。たぶん年齢設定はハタチ前後。軍人だから、屈強な感じで、雄々しさと繊細さが同居しているような青年なんですよ。で、音域とか時代背景や当時の上演スタイルなどを考えてみると、この役、カストラートで演じられることを前提としていると思うのです。カストラートが演じれば、おそらくすっきりするんだろうと思うけれど、今の時代にカストラートがいないので、ズボン役のメゾソプラノがやるんだけれど、これが実に残念なんですよ。

 メトでこの役を演じているエリザベス・ドゥショングは、メイク等を頑張って、見かけは(とても青年軍人には見えないけれど)少年に見えるようにして、オバサン臭さは出していませんが、やはり声がメゾなのが残念なのです。

 楽譜に書いてある音はメゾで歌うのがちょうどよいのだろうけれど、メゾで歌うと、どうしても声がくすみがちになります(まあ、それがメゾの声だからね)。声に輝かしさがないんです。青年軍人役だし、ヒーローなんだしイケメン役なんだし、もっと声に輝きが欲しいよね。そういう点では、メールアルトやカウンターテナーで、声が(女声っぽかったり中性的な声ではなく)男声的な歌手の方に歌ってもらいたかったなあ…って思います。まあ、メトで歌える男声っぽいカウンターテナーの人って…そもそもいるのかしら?

 とまあ、残念点ばかりをとりあげてしまったけれど、歌好きには、なかなか楽しめる演目でした。だって、最初っから最後まで、歌いっぱなしなんですもの。それもやたらと難しいフレーズを歌っているわけで、声のサーカスを見ているような気分になります。そういう意味では、このオペラは、オペラ通の人たちのための演目なのかもしれません。

 私? 私はたっぷり楽しみました。でも、もういいや。二度は聞かなくていいです。少なくとも、あと10年ぐらいは大丈夫です。満腹になりました。そういう感じのオペラでした。

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