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2018年3月12日 (月)

ロイヤルオペラ『リゴレット』を見てきました

 ロイヤルオペラとは“英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/18”の事であり、ざっくり書いちゃえば「コヴェントガーデンのライブビューイングを見てきた」って事です。

 私は、オペラのライブビューイングは、アメリカのメトロポリタン歌劇場のモノを中心に見ていますが、たまには別の歌劇場のライブビューイングも、こうして見るわけです。

 同じ演目でも、上演する歌劇場が違えば、あれこれ違うわけです。

 今回、ロイヤルオペラの『リゴレット』は、当地では大人気の演目で、特にその演出は“ゴキブリ・リゴレット”と呼ばれるほどに、地元の人たちからは愛されているんだそうです(リゴレットの道化衣装が、ほとんどゴキブリだから、そう呼ばれているわけです)。

 このディヴィッド・マクビィカーによる演出は、かなりエグい演出です。たぶん、日本では上演できません。メトロポリタンで上演すれば、おそらくブーイングの嵐となるでしょうね。でも、英国の紳士淑女の皆さんは、これを受け入れ、むしろ愛しているわけです。

 さすが、演劇の国イギリス、懐、深いなあ…。

 特に第一幕第一場のマントヴァ公爵の宮殿のシーンがエグいエグい。とにかく、どれだけ公爵が好色であり、リゴレットが並外れた太鼓持ちであり、公爵に使える廷臣たちの性根が腐っているかが、これでもかってくらいに描写されるわけです。このシーンがあってこそ、モンテローネ伯爵の悲しみが際立つのであり、それゆえにリゴレットの公爵に対する警戒心とジルダの誘拐後の悲しみと復讐心が際立つわけです。それゆえのエグい演出なわけです。

 ざっくり言っちゃえば、生オッパイのポロリなんて何度もあるし、生全裸もあれば、生レイプもあるわけです。でも、これ、必要なんですわ。これがあるから、リゴレットの悲劇が生々しく表現されうるわけです。

 という訳で、このエグい演出には、当然好き嫌いがあるでしょう。なので、安易に「ロイヤルオペラのリゴレットはいいよ、ぜひ見たほうがいいよ」とは簡単に言えないわけです。

 さて、歌手に関して言えば、公爵を歌ったマイケル・ファビアーノは、実に素晴らしいです。昨今のテノール歌手で、力強さと輝かしさが両立した歌声って、なかなか無いですよ。実に良いテノールです。

 ジルダを歌ったルーシー・クロウは、カメラがアップになると、ちょっとキツイのですが、それを除けば、ジルダにふさわしいソプラノさんだと思います。声も良いし、演技も十分です。スパラフチーレやマッダレーナの歌手さんたちも、歌も声も演技も、まあ水準以上でしょう。

 リゴレットを歌ったディミトリ・プラタニアスも水準以上と言っちゃあ水準以上なんだけれど、リゴレットという役は、バリトンの持ち役の中でも、エース級の歌手たちが歌ってきた役なわけで、この役を歌うという事は、そういった過去のエース級の歌手たちの歌唱と、どうしても比較されちゃうわけです。

 プラタニアスのリゴレットは…単純にかわいそうなんです。でも、リゴレット自身だって、公爵同様に、相当な悪人だし、性根は腐っているわけだし、その悪人ぶりは、第一幕第一場でしっかりと描写されているわけだから、かわいそうであると同時に、因果応報と言うか、自業自得な部分もあるわけですが、プラタニアスのリゴレットは、そういうリゴレットの持つ、複雑なキャラがうまく表現されていないと思うんですよ。

 リゴレットの悲しみが複雑であればあるほど、ジルダの悲劇が、より際立ち浮かび上がるんですよ。でも、リゴレットが単純にかわいそうなだけだと、ジルダがただ単に、恋に盲目になって暴走しただけのバカな小娘になってしまうわけです。

 だから、モンテローネ伯爵の呪いは、どうなっているの?…って話なんですよ、でしょ?

 このオペラは、本来は昨年亡くなったディミトリー・ホロストフスキーがリゴレットをやるはずだったんだそうです。あくまでもプラタニアスはダブルキャストのBチームのリゴレットだったわけです。もしもホロストフスキーがリゴレットを演じていれば、どんな感じになっていたでしょうか? ホロストフスキーは、かなりのイケメンですからね、典型的な醜男であるリゴレットなんて、演じられたのでしょうか? 逆に、イケメンさを感じさせないほどの演技を見せてくれたでしょうか? 今となっては全く分かりませんが、どちらにせよ、プラタニアスではないバリトンさんで、このリゴレットを見たら、また印象が変わるんじゃないかなって思う私なわけです。

 とにかく、色々あるにはあったわけだけれど、私的には、この上演は大当たりだったわけです。リゴレットというオペラは前々から知っていましたが、今回はじっくりと味わい、その素晴らしさを堪能しました。どれだけ気に入ったのか言えば…映画が終わるや否や、すぐに銀座に行って、リゴレットのヴォーカルスコアを買っちゃったくらいです…八千円もして、高かったけれど(汗)。んで、そのヴォーカルスコアを見ては、映画を思い出して、グフグフ言っているわけです。

 まあ、マントヴァ公爵、いつかは歌ってみたいです。もちろん、いつか…ですね。楽譜を見ると、めまいがするほどに難しいんですわ、マントヴァ公爵。でも、いつか歌ってみたいなあ。

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