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2018年2月19日 (月)

メトのライブビューイングで「トスカ」を見てきました

 私はメトのライブビューイング上映のすべてを見ているわけではありません。基本的に、見たことのないオペラ(で、なおかつ興味をそそられるオペラ)を上演する時と、新演出のオペラ(で、なおかつ興味をそそられるオペラ)を上演する時に見ると決めています。

 本当はすべての上演作品を見たいのだけれど、お金と時間に制限があるものでね…。

 で、今回は「トスカ」を見てきました。私、「トスカ」は色々な上演を何度も見ていますが、今回の上演がメトの“新演出”になるそうなので、改めて見る事にしたわけです。

 実はメトの「トスカ」は2009年に演出が変更されたばかりで、10年と経たずに演出が変更されたというわけです。

 どうも、2009年のボンディの演出がダメだったようです。アメリカの観客たちには、あの演出には、かなりご不満だったようで、それで今回の演出変更につながったようです。ちなみに、私は2009年版の演出をアンコール上映で2011年に見ているので、なおさらすぐに変更されたような気になっていたようです。その時の感想記事はこちらです。

 以前の記事を見ても分かる通り、私は個人的にはボンディの演出は好きでした。歌だけでは分かりづらい、ストーリーの説明やキャラの性格の掘り下げも芝居と演出の力で補っていたし、別に不満など、特になかったのですが、アメリカのオペラ好きな方々には、えらく不評だったようです。

 まあ、確かに、ボンディの演出とそれ以前のゼッフィレッリの演出とは、だいぶ違うものね。ボンディの演出は2009年当時から、アメリカでは賛否両論だったそうだしね。

 で、今回のマクヴィガーの演出なんだけれど、振り子が振り戻るかのように、現代演出の要素も残しながら、伝統的な定番の演出に戻ってしまいました。まあ、安心して見られると言えば、その通りなんだけれど、なんかアクが抜けちゃったなあ…って感じです。

 それは演出だけでなく、主演のソニア・ヨンチェヴァとヴィットーリオ・グリゴーロの歌唱のせいもあるかなって思います。二人とも、声が軽いんだよねえ…。なんか、オペラのお話が絵空事のようで、現実っぽさが希薄なんです。まあ、オペラって、基本的に絵空事だし、ファンタジーだし、それに現実っぽさなんて加えるのは、野暮ってもんなんだろうと思うんだけれど、それにしても、ボンディの演出の後だと、なんともアクの無い、優等生向きの演出になっちゃったなあ…って感じです。

 まあ、地元アメリカのファンは、これを望んでいるのなら、仕方ないよね。アメリカ人って、案外保守的なんだよね。

 とは言え、別に私はマクヴィガーの演出がダメとは言いません。これはこれでアリです。ただ、私の好みは、以前のボンディ演出の方だったってだけの話です。

 今回の演出では、トスカは若い娘…ってか、小娘に設定されているそうです。演じる歌手が大御所ソプラノ(つまりオバサン)が多いせいか、ついついトスカって成熟された女性だと思いがちだけれど、今回の小娘設定で物語を見てみると、色々とストーリーに合点がゆくし、何よりトスカのキャラに整合性が出てきます。いやあ、これには今まで気づきませんでした。

 となると、実はスカルピアも若いんじゃないかなって思うようになりました。

 ここから先は、私の妄想です。

 スカルピアって、だいたい爺さんバリトンであったり、若いバリトンでも老けメイクをして演じるので、年寄りのイメージがあるんだけれど、実は思うほど年寄りではなく、せいぜい中年のオッサン程度なんじゃないかって思いました。中年のオッサンって、まだまだギラギラしているものね。ならば、トスカのカラダを求めるのも分からないでもないのです。本当の爺さんは、小娘のカラダなんて欲しがりませんからね。スカルピアは、せいぜい中年の、精力ギンギンのオッサンなんですよ。

 となると、カヴァラドッシの年齢設定にも疑問が生じます。

 カヴァラドッシって、アンジェロッティの親友なんですよね。で、アンジェロッティって、逃亡中の政治犯なんだけれど、彼って、ローマ共和国の高官って設定なんですよ。つまり、とてもエラい政治家様で、そんな立場の人が、そんなに若いはずはないんです。少なくとも、青年ではありません。せいぜい中年、下手すると爺さんの可能性すらあります。そんな人と親友なんだから、カヴァラドッシも、あまり若くはないはずです。もしかすると…中年のオッサン? でも、カヴァラドッシが中年のオッサンなら、スカルピアと対等なクチを聞いちゃうのも分かるし、スカルピアの部下たちを、若造たちを見下すような態度で接するのも分からないでもないです。

 カヴァラドッシが中年オヤジならば、トスカに対する甘々な態度も分かりますし、トスカが嫉妬ぶかい娘なのも分かります。だって、相手はオトナだし、騎士様(つまり貴族だよ)だし、人生経験だって豊かだろうし、お金持ちだろうし…、一方のトスカは、世間知らずの小娘だし、歌姫(ナポレオン時代の歌手なんて、使用人に毛の生えた程度の扱いの職業です)だし、自分に自信がなくて、ついつい嫉妬しちゃうんだろうなあって思うわけです。

 かわいいね、トスカちゃん。

 そんな風に(私が勝手なイメージで年齢設定を変更して)このオペラを見てみると、なんとも新しい世界が広がるわけです。「トスカ」って“オッサン二人が政治争いをしていて、それに小娘が巻き込まれて、あたふたしている話”になるわけです。いやあ、面白い。

 最後に出演者の事を書きます。

 グリゴーロは…カヴァラドッシを歌うのは、まだ早かったんじゃないかな? 上手いんだけれど、この役に必要な声の重さに欠けると思います。演技は熱いんだけれど、声の熱量はちょっと足りないような気がしました。あと、10年ぐらいすると、良い感じになるかもしれませんが…今はまだ声が若すぎるような気がします。

 ヨンチェヴァは…上手いねえ。そもそも演出家が、トスカを小娘に設定しているのだから、これくらい(従来のソプラノさんと比べると)軽めの声のソプラノで良いのだろうね。演出が伝統に回帰しても、歌手の声までは、昔のような大ソプラノの声を求めなかった…って事だわな。昔風のトスカなら、声は重量級のソプラノだものね。でもね、声はともかく、演技力は昔の大ソプラノレベルだったのは…どうなんでしょ?

 ルチッチのスカルピアは…歌も演技も薄味…かな? スカルピアって、悪人のはずなんだけれど、ルチッチが演じると、案外、紳士に見えるんだよね。だからかな、2幕のトスカとスカルピアの対決シーンが、なんとも物足りなく感じてしまいました。当初予定のブリン・ターフェルが歌っていたら、もっとねっとりした悪役になっていたんじゃないかしらって思います。

 そうそう、名前は知らないのだけれど、スポレッタを歌っていた脇役テノールさんの演技が良かったなあって思います。スポレッタなんて、ただの端役なのに、なんか妙に心に残るんだよねえ…。でもこの役、そんなに存在感があっちゃダメな役だとも思うんだけど(笑)。

 それにしても、今回の「トスカ」は、いかにもメトのオペラって感じでした。メトって、保守的なんだよね。保守的だからこそ、子どもや初心者にも安心して勧められるんだよね。「最初にオペラを見るなら、メトの上演版」というのが私の口癖なんだけれど、最近のメトは、ちょっと冒険しすぎて初心者に優しくなかったのですが、今回の演出でメトの「トスカ」は、そんな昔の初心者に優しいオペラに戻ったわけです。

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