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2014年10月 8日 (水)

【お悩み相談】声楽…高音が出ません

 今回の記事は、困っでいる皆さんのために…というよりも、困っている私自身に向かっての覚書といった側面のある記事です。

 歌と言うモノは、サビというか、その曲のカッコいい部分のメロディの中に、たいてい高音があります。ですから、その高音の部分をうまく歌えるかどうかが、その歌をかっこ良く歌えるかどうかの分かれ目だったりするわけです(特にイタリア系の曲の場合は顕著ですね)。

 ところが、この高音って奴が難しい(汗)。なかなかうまく発声する事ができない。いや、最初から高音を上手に発声できる人(いわゆる“天然歌手”)もいないわけじゃないのですが、大抵の人は苦労するわけです。特に日本人は努力家が多いですから、最初はうまく歌えなくても、あの手この手を使って、頑張りに頑張るわけです。それでめでたく歌えるようになれればいいけれど、それでもうまく歌えない事も多いです。いや、かなり多くの人たちが、努力したからと言って、うまく歌えるわけじゃないって言ってもいいかもしれません。

 なぜ、そうなるのか? 結論から言うと“頑張る”からダメなんです。頑張るから高音が出ないんです。頑張って出るのは、怒鳴り声とか、悲鳴とか、その手の類の声しかありません。まあ、怒鳴り声や悲鳴でも高音は出せますが、どちらも不快に聞こえますし、第一、歌っている歌手にとって、ノドの消耗が激しくて、とても歌向きの発声ではありません。その無理を通し続けると、やがて声がつぶれて、いわゆるハスキー・ヴォイスになってしまいます(涙)。

 歌のサビで使えるような、美くしくて聴く人を魅了するような高音は、怒鳴り声や悲鳴ではないわけです。それとは別種の声なのです。

 最近のJ-POPなどでは、かなりの高音が使われていますが、あの手の高音の多くは、実はファルセットと呼ばれる発声によるものです。ファルセット…仮声とか、裏声とか呼ばれるものです。ファルセットは、ポピュラー歌唱ではアリですが、クラシック声楽の場合は使用不可な発声方法であって、これを使って歌うと“負け”になります。もちろん、特殊効果を狙って使った場合は、その限りではないし、合唱などでやむなく使うのも理解できないわけじゃないです。でも、通常の独唱で、通常の歌唱の場合、ファルセットを使って歌うというのは、まずありえません。

 もちろん、ポピュラーでも、高音をいつもいつもファルセットで歌っているわけではありません。ポピュラー歌唱では、ファルセット以外の高音発声方法として、ミックス・ヴォイスというモノがあるそうですが、私の場合「ミックス・ヴォイス? それって、美味しいの?」状態です。おそらく、ポピュラー歌唱で言う“ミックス・ヴォイス”は、クラシック声楽で言う“頭声”に近いモノかもしれませんが…同じではないと思うんですよね。

 と言うのも、ポピュラー歌唱で使われるテクニックって、基本的に、マイクの使用が前提となっている発声なので、そうやって発声される声は、それはそれで魅力的だと思うけれど、私がやっているクラシック声楽とは、全くジャンルが違う音楽なので、テクニック的には使うことはできません。

 だって、クラシック声楽では、マイクの不使用が前提だし、そのために拡声無しでもホールに響き渡るような声で歌える事というのが、最低条件になります。そこが違うので、発声テクニック的には、あれこれ違ってくるわけです。

 なので、ここで私が話すのは、クラシック声楽における高音の発声法って事になります。

 まず、高音発声に必要なのは、リラックスして発声する事です。リラックス…そうです、心身ともにユルユルになっている事です。脱力と言ってもいいかもしれません。とにかく、楽でいる事です。

 と言うのも、高音を出すためには、声の源である声帯を、薄く伸ばすというイメージが必要だからです(実際に薄く伸ばせるかどうかは私には分かりません)。そのためには、声帯を前後におもいっきり引っ張らないといけません。でも、声帯を直接引っ張る事はできないために、ノド仏を下げてみたり、軟口蓋を上げてみたりと、色々と工夫をして声帯周辺の筋肉を引っ張るわけです。

 声帯及び声帯周辺(つまりノド)は筋肉で出来ています。だから、声帯をやさしく引っ張れば、前後に薄く伸ばす事ができます(あくまでもイメージです)。大切なのは、声帯を“やさしく”引っ張る事です。絶対に、力任せに引っ張ってはいけないのです。頑張ってはいけないのです。

 と言うのも、筋肉って、力が入ると硬くなるものでしょう。力を入れると縮んで膨らむものでしょう。なので、強い力で引っ張ったり、あるいは声帯とかノドそのものとかに力を入れてしまうと、声帯付近が硬くなり、縮んでしまい、膨らんでしまいます。

 そして、高音発声に必要な、声帯やその周辺部を薄く伸ばすなんて事は、まず出来なくなってしまいます。

 つまり、高音を出そうと、頑張れば頑張るほど、高音発声に必要な動作とは、全く逆の動きをしてしまうのです。だから、頑張っちゃいけないんですよ。

 まずはリラックスです。リラックスして発声すれば、声も自然と聴きやすい柔らかい発声になります。つまり、リラックスして発声する事で、倍音豊かな声が発声できるわけです。

 でも、一から十までリラックスのしっぱなしの、ユルんだノドだけでは高音は到底歌えません。でも、高い声を出すためには、ノドはリラックスしてユルませないといけません。つまり、ノドをユルめたまま、発声できなければいけないし、その高い声を遠くまで飛ばさないといけないのです。

 そのためには、ノドではない箇所に頑張ってもらわなければいけません。

 声はノドを息が通る事で生まれます。ノドはリラックスしてユルユルにしないといけないのなら、ノドを通る息を頑張る事にしましょう。

 では、どんな息をノドに通せば、遠くまで飛ぶ高音の声になるのでしょうか?

 まず、力強い息が必要です。最も力強い息と言っても、多量の空気を短時間で噴射するような力強い息ではありません。むしろ、トルクの強い、腰の入った息が必要です。そんな息を生み出すために必要なテクニックが、腹式呼吸というヤツです。息を下半身で支える事で、トルクの強い、腰の入った息ができるというものです。

 それに、腹式呼吸ならば、ノドからも遠い箇所(主に横隔膜)を使用するので、そこを力んでも、ノドへの影響を少なくする事ができますしね。

 息は、力強ければ、それでいいのか? いいえ、それだけでは高音発声はできません。高音発声には、速い息が必要となります。なぜなら、高音とは、振動数が高い空気の疎密波なので、それを生み出すには、声帯を激しく速く振動させる必要があるからです。

 そのためには、息の速度が速くないといけない。速い息を声帯に通すことで、声帯の振動を速くする事ができるからです。ただし、息の分量は、多い必要はありません。むしろ、少なめの息の方が良いかもしれません。と言うのも、ノドを通る息の量が多いと、ノドを傷めるおそれがあるからです。

 ノドのリラックスと力強い腹式呼吸。この二つのある意味、相反する行動を同時に行う事で、高音が発声できるわけです。でも、これが難しい。頭で分かっていも、なかなかうまくはできないものです。私もそこで苦労しているわけです。でも、頑張っていますよ。
 さて、このようにして生まれた高音をどれだけ美しく響かせるかは、また別の話となるので、今回は触れません。また、アペルトとアクートの話であるとか、パッサージョの話とか、それはそれで興味深いお題がこの後に続きますが、それもまた別の機会に。

 あと、言わずもがなですが、高音をどこまで出せるかは、訓練以前に、持って生まれた声帯の性能に依存する事も忘れてはいけません。まあ、ファルセットで楽に出せない音は、出ないかもしれない…と思っていればいいんじゃないかな?

 とりあえず今回は、ノドのリラックスと、力強い腹式呼吸でなければ、高音を発声する事はかなわないという事を書いて、お終いにしたいと思います。

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コメント

すとんさんのおっしゃること、ものすごーくよくわかります。リラックス、ゆるゆる、振動、周波数・・・・。私の考えてたことも同じようなことです。笛の音は、そういうきちんと「こういう高さのこういう響きの声で歌うんだ」という意思を持っている「歌声になるチカラがある息」を当ててもらってきれいに高音を鳴らすのかなあ、と思っています。
じゃなきゃ、金属のフルートであんなにきれいな澄み切った高い音が鳴るはずがないですもん。フルートって、チカラだけで鳴らしたら高音域はキンキンで耳を塞ぎたくなりますよねえ。今日の記事は、ついついフルートに置き換えて読んでしまいましたが、とってもうれしい記事でした。

だりあさん

>ついついフルートに置き換えて読んでしまいました

 いいんじゃないですか? 実際、フルートと声楽って(もちろん、違う点もたくさんありますが)似た点がたくさんありますし、テクニックの流用はかなり可能です。

 実は私、ソプラノ歌手さんで「私、中学高校ではフルートをやってたんですよ」という方を幾人か知ってます。その方々によると、元フルート吹きの歌手って、結構いる…と言うか、フルートでは音大受験は難しいので、声楽に転向して音大に入ったという方、それなりにいるのですが、フルートのテクニックと声楽のテクニックが似ているので、その転向は割りとスムーズなんだそうですよ。

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