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2011年8月29日 (月)

メトのライブビューイングで「トスカ」を見てきました

 ただいま、オペラはオフシーズンでして、当然、メトのライブビューイングもオフなのですが、東京築地にある東劇で、ライブビューイングのアンコール上映をしているので、そそくさと出かけてきました。思い出してみれば、私がメトのライブビューイングに初めて接したのは、昨年のアンコール上映でしたから、これでようやく一年たったわけです。

 今回、見てきたのは、2009年シーズンのオープニング演目であった「トスカ」です。指揮者がジョセフ・コラネリ(レヴァインの代役)、演出がリュック・ボンディ、トスカ[ソプラノ]がカリタ・マッティラ、カヴァラドッシ[テノール]がマルセロ・アルバレス、スカルピア[バリトン]がジョージ・ギャグニッザでした。

 この上演は、当時、賛否両論を巻き起こした、スキャンダラスな公演だったそうですが、私は見たところ、実によかったですよ。スキャンダルとなったのは、おそらく演出が、慣れ親しんだゼッフィレッリのものから変更になった上に、今度の演出家さんが、かなりのビッグマウスな人なので、ゼッフィレッリのファンがブーブー言っていたからじゃないかと思います。

 私の個人的な趣味で言うと、今度の演出における、キャラ設定の方が、ストーリーが分かりやすくて好きです。

 演出家さんはインタービューの中で、次のような主旨の事を話していました。

 …歌手は歌わないといけないので、役者のように自分をごまかしながら演技する事ができません。だから、オペラの演出は演劇のそれとは違って、ストーリーの流れに沿った、自然なものでなければいけません。そこで利用するのが、それぞれのキャラクターの感情です。キャラクターの感情を深く掘り下げて、感情の流れに沿って演出していけば、歌手たちは歌いながら、自然に演技をする事ができます…

 また、こんな主旨の事も言ってました。

 …トスカの悲しみは、とても深いものです。これを演劇で表現するのは、簡単な事ではありません。しかし、オペラなら音楽の力を借りる事で表現できるのです。それがオペラならではの表現なのだと思います…

 歌唱に関しては、端役に至るまで、素晴らしかったです。さすがはメトのオープニング・アクトです。出演者にスキがありません。

 とりわけ、私はテノールのアルバレスの、分かりやすいアクートに感じ入りました。「いくぞ、いくぞ……いったーーーーー!」って感じで楽しかったです。

 やはり特出すべきは、演出とかキャラ設定でしょうね。私は前のゼッフィレッリの演出のDVDを持ってますが、それと比べて、キャラ設定が今回のものの方が全然いいと思いました。

 トスカは、感情の振り幅が広くて、喜怒哀楽を素直に表現する。かわいい女性です。そして、ユーモラスな面も持っています。オペラの最中に、客席から笑いが三度ほど漏れましたが、いずれもトスカのユーモラスな演技からです。今までの「トスカ」では、トスカって、追い詰められた可哀相な女性ってイメージしかありませんでしたが、この演出では、しっかりと感情を持った生きたトスカになってました。

 カヴァラドッシは、ちょっと勇敢で友情に篤い、普通の人でヒーローではありませんでした。トスカを愛しながらも、彼女に溺れる事はなく、彼女の欠点も把握し、それゆえに適度な距離を保っているオトナの男性でした。たぶん、彼らはこのまま付き合っていても、結婚には辿り着かないだろうなあ…なんて思っちゃいました。こういう人って、いるよなあ…って思いながら見てました。

 スカルピアは、悪役なんだけれど、なんか人間臭くてよかったです。従前の演出では「悪の権化」のような扱いになってますが、ここでは決してそうではなく、悪人と言うよりも、欲の固まりって感じでした。欲張りな人? 食欲・性欲・支配欲、これらの三つの事に心が動かされる人物なんだなあって思いました。そうそう、スカルピアって、女好きだけれど、音楽好きでもあるんですね。21世紀の我々には「悪」強調されるよりも「欲」を強調された方がシンパシーを感じやすいかもしれません。

 しかし、スカルピアの執務室にいた(黙役の)売春婦さんたちは、生乳&生尻を惜しげもなく出してましたが、あっちのオペラでは、平気でそういう演出があるんだよねえ~。日本の舞台じゃ考えられませんね、文化の違いなんでしょうね。

 脇役では、スカルピアのアシスタントのスポレット(テノール)がいい味出してましたね。なんか「赤ずきんちゃん」の狼さんのヒントをたくさんもらったような気がします。

 とにかく、歌のある役ばかりでなく、歌のない黙役の人たちが大勢いて、彼らの何気ない演技が、オペラの詳細を雄弁に語っていました。この演出なら、歌がなくても、芝居として「トスカ」が楽しめるかもしれません。

 しかし、今どきのオペラ歌手って、歌以外に演技もきちんとできないといけないんですね。カラスやドミンゴは、歌唱力に加え、すぐれた演技力で評価されていましたが、今やその、カラスやドミングに準じるクラスの歌手たちがワンサといるわけで…すごいなあ。

 ちなみに、歌手たちは、この公演のために、それそれ演技の練習だけで5週間かけたそうです。プロがそれだけの期間、練習に専念するんだから、やはりこれほどのモノができるわけですね。

 ラストシーンのトスカの自殺は…「おおっ!」て思いました。文字通り“まぶたに焼きつきました”。照明が絶妙のタイミングでフラッシュに切り替わり、心にグサーって来ました。このラストの自殺のシーンだけでも、ゼッフィレッリの演出を越えたと言っていいんじゃないかな?

 この公演のDVDは…輸入盤ならあるけれど、日本語盤がないのが残念ですね。輸入盤は字幕が英語なんですよね。やはり、オペラは日本語字幕が必要ですよね。なので、日本語盤がなくて、皆さんにお薦めできない事が、とても残念です。

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コメント

これも、行く予定だったのに~っ!!
ダーリンなんてキライよ~っ!!

トスカがかわいい女性だったとか、スカルピアが人間臭いとか、
カヴァラドッシの性格分析とか・・・

ああぁぁあああぁぁぁっ!!!!!
日本語字幕つきDVDだして~っ!!

今シーズンはアンナ・ネトレプコの「アンナ・ボレーナ」が見たいわぁ!
ディミトリさまも気になるし、カウフマンもいいわねぇ

プリロゼさん

 ダーリンさんを優先してあげても、バチは当たりませんよ。それに「トスカ」は来年のアンコール上映でも…きっと、たぶん、もしかすると…再演してくれるかもしれないし…。まあ、こういうものは、一期一会って部分もあるので、すっぱり諦めましょう(笑)。

 秋からのシーズンのオープニングアクトが「アンナ・ボレーナ」なんですよね。私はどうしようかな? 次のシーズンは、色々と見たいものがたくさんありますが、家計の都合もあるし、仕事のスケジュール調整も必要なので、どれを見ようか、まだ決まらないんですよ。オープニングアクトは、メトも力が入っているから、見た方がいいんだろうけれどね。どうしましょう。

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